RTL-SDR を使った簡易スペアナ
この記事のまとめ:
- RTL-SDR を使って簡易スペアナとして使えるソフトウェアをいくつか試しています。
- 日本の通信事業者の割り当て周波数をまとめています。
背景
少し前に LimeSDR mini を手に入れたものの、これ単体ではちゃんと RF を出力しているのか(もちろん有線系で)よくわからないので簡易的にスペアナ的なものがあると便利だなと思って探していたら RTL-SDR というものがあることを知り、購入して試してみました。
RTL-SDR
RTL-SDR といってもそれ自体は製品名ではなく、RealTek RTL2832U チップを搭載したデバイスを指すようで、このチップを搭載したデバイスは探すとかなりいっぱいあります。 私は、Nooelec NESDR SMArt XTR SDR というものを Amazon.co.jp で購入してみました。Amazon にもいろいろ他にもあったのですが、これに搭載している RF チューナーである E4000 というものが RTL-SDR として一番高い周波数に対応しているようなので E4000 を搭載した一番安価なものを購入してみました。
RTL2832U
RTL2832U は、USB インターフェースを持った DVB-T や FM ラジオの受信機用のチップなのですが、無加工の I/Q サンプルをホストに転送することができるため、受信専用の SDR としても使えます。
最大 3.2 MS/s (sample/sec.) のサンプリングレートで 8 ビットの I/Q サンプルを出力することができるようです。
参考:
Elenics E4000
E4000 はマルチバンドの RF チューナー IC でデジタルテレビやラジオ放送用に作られています。とはいっても 52-2,200 MHz まで対応しているようです。私が購入したものは E4000 ベースとなっていて、65 - 2,300 MHz まで対応していると書いてあります。ただし、デジタルテレビ用ということもあってか、1,100 MHz 付近で使えない帯域があるようです。
RTL-SDR 用のソフトウェア
RTL-SDR 用のソフトウェアを探してみると GitHub などでもいくつもあったのですが、RTL-SDR 自体の流行りが過ぎたのか結構更新されていないものが多かったので、使えそうなものだけピックアップして3つほど紹介します。
なお、各ソフトウェアでの測定結果がありますが、これらは LimeSDR mini に付いてきたアンテナで、800-960 MHz と 1710-2170 MHz、2400-2700 MHz が対応帯域となっていますので、それ以外の帯域での受信感度は低いものとしてみてください。
SDR# (SDR Sharp)
SDR# は Airspy という SDR のハードウェアを販売されている会社が出しているソフトウェアです。Airspy で使用している受信機チップは RTL2832U ではないのですが SDR# は RTL-SDR にも対応しております(SDR# 以外のソフトウェアは RTL-SDR には対応していなさそうです)。また、対応 OS も豊富で macOS はもちろん arm でも使えそうです。
非常に使い勝手もよく、きれいに波形が見えるだけでなく、最大 2,300 MHz まで見ることもできましたし、サンプリングレートも 3.2 MS/s まで使えました。
サンプルとして私の家の近くでは、楽天モバイルの LTE B3 の波が一番きれいに見えたので載せておきます。
# 1,826 MHz できれいにサイドローブが見えるので 1,835 MHz を中心に 20 MHz のシステム帯域で運用していそうですね。また、帯域内でギザギザしているのは参照信号だけがきれいに見えているのだろうと思います。
ダウンロードサイトはこちら。
CubicSDR
CubicSDR は Nooelec NESDR SMArt XTR SDR のサイトの “Download” タブからダウンロードできるソフトウェアの1つです。CubicSDR 自体はクロスプラットフォームの SDR アプリケーションとして GitHub で公開されているオープンソースソフトウェアのようで、Nooelec が開発しているわけではなさそうです。
基本的な機能は SDR# と近いものがあります。ただし、SDR# と同じ周波数帯を観測したところ、観測帯域の両端がうまく計算されていない感じが一目でわかります。同じような機能なので、SDR# を使う方が無難そうです。
ダウンロードサイトはこちら。
spektrum
上記の2つのソフトウェアは、RTL-SDR のサンプリングレートで観測できる帯域幅だけを表示していましたが、spektrum はサンプリングレート以上の広帯域のスペクトルを周波数掃引して表示してくれます。他にも周波数掃引して広帯域のスペクトルを見れるソフトウェアもあったのですが、spektrum が一番表示が早かったです。ただし、spektrum ではハードウェアの限界周波数までは使えず、なぜか最大で 2147 MHz までしか使えませんでした。
例えば、上記で表示していた楽天モバイルの B3 20 MHz のダウンリンクの波形を端から端まで見ることができます。ただ、本来であれば青とピンクのライン当たりでサイドローブが見え始めるべきなのですが、そこまで厳密ではなさそうです。
上記では 20 MHz 幅でしたが、下記は 710-2147 MHz まで表示してみました。下から B28、B18/26、B8、B11、B21、B3、B1 の一部まで見えています。こうやって見るとモバイル通信用以外の帯域はほとんど使われていないですね。
ダウンロードサイトはこちら。
参考(日本の通信事業者の割り当て周波数)
測定できるデバイスが出に入るとどの周波数がどの事業者が使っているのか知りたくなるので、一覧をまとめてみました。
Standard | Uplink or TDD (MHz) | Downlink (MHz) | Operator |
---|---|---|---|
FDD Band 28 | 718 - 728 | 773 - 783 | KDDI |
728 - 738 | 783 - 793 | NTT docomo | |
738 - 748 | 793 - 803 | SoftBank | |
FDD Band 18/26 | 815 - 830 | 860 - 875 | KDDI |
830 - 845 | 875 - 890 | NTT docomo | |
FDD Band 8 | 900 - 915 | 945 - 960 | SoftBank |
FDD Band 11 | 1,427.9 - 1,437.9 | 1,475.9 - 1,485.9 | SoftBank |
1,437.9 - 1,447.9 | 1,485.9 - 1495.9 | KDDI | |
FDD Band 21 | 1,447.9 - 1,462.9 | 1495.9 - 1510.9 | NTT docomo |
FDD Band 3 (Band 9) | 1,710 - 1,730 | 1,805 - 1,825 | KDDI |
1,730 - 1,750 | 1,825 - 1,845 | Rakuten Mobile | |
1,750 - 1765 | 1,845 - 1,860 | SoftBank | |
1,765 - 1,785 | 1,860 - 1,880 | NTT docomo | |
TDD Band 39 / sXGP | 1,893.5 - 1,906.1 | Unlicensed | |
FDD Band 1 | 1,920 - 1,940 | 2,110 - 2,130 | KDDI |
1,940 - 1,960 | 2,130 - 2,150 | NTT docomo | |
1,960 - 1,980 | 2,150 - 2,170 | SoftBank | |
TDD Band 41 / WiMAX R2.1 AE/ AXGP | 2,545 - 2,575 | Wireless City Planning | |
2,595 - 2,645 | UQ Communications | ||
TDD Band 42 | 3,400 - 3,440 | SoftBank | |
3,440 - 3,520 | NTT docomo | ||
3,520 - 3,560 | KDDI | ||
3,560 - 3,600 | SoftBank | ||
LTE TDD Band 43 / NR TDD n77/ n78 |
3600 - 3700 | NTT docomo | |
3700 - 3800 | KDDI | ||
NR TDD n77 | 3800 - 3900 | Rakuten Mobile | |
3900 - 4000 | SoftBank | ||
4000 - 4100 | KDDI | ||
NR TDD n79 | 4500 - 4600 | NTT docomo | |
NR TDD n257 | 27,000 - 27,400 | Rakuten Mobile | |
27,400 - 27,800 | NTT docomo | ||
27,800 - 28,200 | KDDI | ||
28,200 - 29,100 | Local 5G | ||
29,100 - 29,500 | SoftBank |
参考資料
- 800MHz 帯における IMT-2000 周波数の割当方針
- 700/900MHz帯の周波数再編の概要
- 3.9世代移動通信システムの普及のための特定基地局の 開設計画の認定に係る審査概要 ~773MHzを超え803MHz以下の周波数を使用する特定基地局~
- 3.9世代移動通信システムの普及のための特定基地局の 開設計画の認定に係る審査概要 ~945MHzを超え960MHz以下の周波数を使用する特定基地局~
- 3.9世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画の認定
- 1.7/3.4GHz帯の周波数再編の概要
- 平成30年度 携帯電話・全国BWAに係る 電波の利用状況調査の評価結果
今回は以上です。 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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